True Colors -memories of the abyss-
基本情報
| ブランド | MELLOW |
|---|---|
| 発売日 | 2025-12-26 |
| 公式サイト URL | https://mellow-soft.com/true-colors/ |
| ブランドサイト URL | https://mellow-soft.com/ |
| 管理人お気に入り度 | A(心をがっちり掴まれた、今後何度も思い返すであろう作品) |
| 管理人おすすめ度 | C+(よほど刺さりそうな人がいれば勧めるかもしれない作品。) |
| 管理人プレイ時間 | 21時間 |
こんな方におすすめ
- 何かを諦めたけど、自分なりに折り合いをつけて日々を生きている人
- 水が印象的な綺麗なビジュアルを鑑賞したい人
- MELLOW らしい独特な考え方の女の子と交流したい人
こんな方は要注意
- 主人公以外の男性キャラのHシーンが苦手な人
感想
自分にとって、「思春期の頃の自分」がちょっと顔を出したときに、その置き場になってくれそうなゲーム。思春期の頃の自分の痛みに寄り添ってくれた作品。才能と努力の二律背反、人から見た自分、などのテーマはエロゲに限らずフィクションのテーマとして王道の1つだと思うが、だいたいの作品で提示されているメッセージは、自分にはちょっと眩しくて、息苦しい。そこに、 MELLOW らしいの向き合い方を提示してくれたのが印象的だった。
露骨なネタバレを含むため、該当部分は白文字で書きます。見る場合はその部分を選択して反転させて見てください。
ゲームとは関係のない話だが、私は基本的にゲームの感想では、
- 過度な自分語り
- 他のゲームやジャンルの dis
は、避けるのがベターというか、上品だと考えている。 エロゲの話をしている時点で下品ではあるし、他の人の感想で自分語りや dis を含んでも読みごたえのある感想はいくらでもあるので、あくまで自分が感想を書くときの方針でしかないが。
しかし本作は
- 自分の学生時代の悩みに刺さった
- 苦手っぽいジャンルなのに刺さった
という点で、自分にとってやや特異な作品であった。
そのため、ある程度の自分語りとジャンル dis 発言はご容赦願いたい。 一応、 dis は過剰にならないように気をつけたつもりではある。
感想に戻る。
今でこそこの作品を評価しているが、最初に公式サイトを見たときは青臭くキラキラした要素を強く感じ、まったくと言っていいほど興味が持てなかった。 それでも体験版を手に取った理由は、ひとえにMELLOWというブランドへの信頼だった。
青春を全面に押し出した作品は苦手だ(この段落は読み飛ばしてもらって OK)。 仲間と心を一つにして大きなことを成し遂げ、その過程で青臭い葛藤を経て友情や恋が芽生えるような青春もそれはそれで素敵だとは思う。 そういう作品は大抵、本当に好きなことを懸命にやれだとか、友達のために頑張れとか、仲間と一緒だから大きなことが成し遂げられるとか、そういうメッセージを感じる。 それは正しい。本当に正しいのだが、好きなことが本当に好きなのかどうかも分からず、友達も(ゼロではないが)ほとんどおらず、他人や目標にそこまで献身できていない自分にはちょっと辛いものがある。 かなり極端で自意識過剰なことを言うと、そういう自分は消えてしまったほうが、世界がほんの少しだけ綺麗になるかな、と思ったりもする。 なのに世の中にはそういう作品が溢れていて、しかも絶賛されてい(るように自分には見え)るので、そういう作品に触れるときにはやや息苦しさを感じる。
本作にも、そういった青臭い要素はなくはない。というか、むしろ多い。体験版の、メインキャラクターたちがみんなで映画を撮る時点でだいぶ青臭い。 それでも他の作品と違った受け取り方ができたのは、本作が自分の内面との向き合い方や、繊細な心理描写に力を入れていたからだと思う。青春描写はそこにいつも映っているけれどフォーカスは当たっていないような、そんな状態だ。
例えば、序盤の瑠璃色(※紛らわしいが、主人公の名前)。彼が認めていないものは2つある。
1つは自分の恋心。直接的な語彙をほとんど使わず、恋心の相手を見るときの地の文の描写がとても鮮明になることで、自分で認めがたい恋心が表現されている。
もう1つが、才能というもの。これに関しては「認めない」と直接的に発言しているが、直接的な発言内容にある種の割り切れなさが滲み出ている。薔薇や凪といった才能ある者の努力を「割に合わないから、自分に同じことはできない」と言いつつ「尊敬している」とも言うあたりも、心の底では才能というものを認めてしまっているのが出てしまっている。
間接的な表現も、直接的な表現も、意図をもって彼を作り上げているのがよく伝わってきた。
その恋心の相手――水萌も興味深い。作中では「普通の女の子」であることが強調されており、ギターと歌は非常に上手いものの、圧倒的な存在感を示す薔薇や野球部のエースの凪と比べるとメンタリティは凡人寄り。容姿は可愛らしいが、確かに薔薇やほたる、スイと並べると、気高い美しさよりもずっと身近な可愛らしさを感じる。
しかしそんな水萌も主人公のカメラを通すと、一気に非凡な存在に感じられる。特に体験版のクライマックスである映画の撮影シーンでは、一枚絵、歌付き BGM、カメラで撮影しているような画面効果、瑠璃色目線のテキスト、すべてが彼女をヒロインにしていた。 後半も楽しめたには楽しめたのだが、正直体験版にあった映画撮影シーンが個人的に最大の山場だったのは否めなかった。 それくらいいシーンだった。
個別ルートはやや失速気味だったのが残念。 お母さんとの関係といい、薔薇の救出といい、結末をぼかす美しさというのは理解できるが、水萌ルートでは「ぼかし」に美しさを感じるための積み重ねが足りなかったのではないかと思う。余白によって生じる余韻ではなく、打ち切りエンドのような消化不良感が残ってしまった。
一方、メインヒロインの片割れであるほたるは体験版では最後の最後しか登場せず、その魅力も未知数のまま。製品版のみのシーンに入っても、謎に献身的で明るい女の子という印象でなかなか人間みを感じることができなかった。
しかしそれはシナリオ上意図的にされている演出。あるシーンでほたるの献身や明るさの裏側にあるものを知ると、一気に立体的なヒロインになる。裏側を知っても、知ったからこそ、やはりあの献身や明るさは理解しがたいほど眩しいものだと思い直すまでがワンセット。
この作品の攻略ヒロインは水萌とほたる。 しかし彼女たちはあくまで主人公である瑠璃色のヒロイン。
『True Colors』という作品のヒロインはなんといっても、妹の深石薔薇だと思う。 たとえ攻略できなくても、他の男性キャラとのHシーンしかなくても。
この作品は彼女の化けの皮――もとい、天才の仮面を剥がす物語だから。
言葉選びといい小波すずの脳が溶けるような甘い声といい、超然とした、まさに魔性の女。かと思えば最後の最後で見せた子どもっぽい一面も可愛らしい。 天才として壁を作られることが苦しい。でも、幼い自分や醜い自分、俗っぽい自分は見られたくない。そんな卑近な葛藤にすら素直になれなかった彼女が愛おしい。
サブではあるが、野球部のエース・凪や独特の価値観を持つ美大生・スイ、ほたるの故郷で出会う人々も物語のテーマに彩を添えていた。彼らのシーンはあまりに人を選ぶというか、ちょっとほかで見たことないタイプのシーンで新鮮すぎた(シーン概要:スイが凪を“ウリ”に誘う。スイに惹かれていた凪は口車に乗せられ、おじさん相手にお尻の処女を明け渡す。)。薔薇のシーンと合わせて、多くの人間の地雷を踏み抜いているのでは。
ここまでで書いた通り、心理描写は基本的にはしっかりしている。ただ、一部飛躍を感じるところもあった。ぶっとんだ発言や他人と違う考え方を持つ登場人物は、MELLOWのブランドカラーではある。しかし自分のメンタリティはそこまで奇人でも繊細でもないので、そこはプレイヤーとのギャップを丁寧に穴埋めしてくれたらなと思うこともあった。 ただ、読み解くためのヒントは散りばめられているので、プレイ後にああでもないこうでもないと妄想するのも楽しみの方の一つかもしれない。
心理描写が相対的に少な目な、伝奇要素の強いシーンでは、逆にビジュアルの強さが引っ張ってくれていたと思う。海辺、沈んだ街など、水が印象的な一枚絵が多かった。
そしてそして、MELLOWのゲームで忘れてはならないのが魅力的なボーカル曲。 今回はどれも登場人物に合っていて魅力的な曲だった。特にほたると水萌の ED はそれぞれキャラクターのイメソンとしても必聴。エンディングの余韻を高めてくれる。 挿入歌の「サマータイムセレナーデ」もとても良いワルツなのだが、使われ方が若干もったいなかった気がしないでもない。もっとこの曲に対応するヒロインの恋心が高ぶったシーンで流してもらいたかった。
誰かの地雷を踏むことを恐れない、一部消化不良感、登場人物にそれぞれ理解しがたい部分がある、という意味では人に勧めづらいけど、自分の心は癒された作品。このクリエイター陣の作品はこれからも買っていきたいと思った。
投稿日: 2026-01-29