シンソウノイズ~受信探偵の事件簿~

基本情報

ブランドAzurite
発売日2016-12-22
公式サイト URLhttps://fanzagames-digination.com/azurite/shinso/index.html
ブランドサイト URLhttps://fanzagames-digination.com/
管理人お気に入り度A大好き!
管理人おすすめ度Aやってほしい。
管理人プレイ時間40時間

こんな方におすすめ

  • ミステリなエロゲがやりたい人
  • シリアスめな青春群像劇が見たい人
  • パズル感覚で推理を楽しみたい人

こんな方は要注意

  • ファンタジー抜きの純粋なミステリを望んでいる人
  • はましま絵を使うからには H シーンは超重要!! な人
  • 宗教上の理由で DMM Game Player が使えない人

感想

装飾的でありながら読みやすく美しいテキスト、全体的にシリアスでありながら各キャラクターへの愛着も沸くシナリオ構成、リアル寄りのタッチで肉感的に描かれていながらも二次元的な可愛さも内包するキャラクターデザイン、透明感あるツインボーカル OP、せつないピアノが印象的な BGM、そして多少変化球ながらも物語を引き立てる程よい難易度の推理パート。そういった各クリエイターの異なる持ち味が綺麗にかみ合った素敵な作品だった。クリエイター陣の尽力もあり、大きな瑕疵もなく、全体的に高い完成度で仕上がっていたと思う。一方で、公式サイトや事前の宣伝、体験版などから受ける印象と違った部分もあって、その点十分に楽しめないという人も多いのかもしれない。特に本作における「ミステリ」がどういうものなのか、R18要素の多寡、本作の起動方法 (DMM Game Player を毎回立ち上げる必要があるorz) については事前に情報を得てから購入したほうがよさそう。

私はエロゲでしかミステリっぽいものを嗜まないミステリど素人なので、ミステリの中の分類がどうこうとかは言えないが、明らかにアンフェアな推理はなかったように思う。元競技プログラマ的に言えば6章のパズルが一番楽しかった。 ただ、ファンタジー要素を含んでおり、その全貌も徐々に明かされていく感じなので推理に必要な材料が揃うのには根気強くシナリオを読み進めていく必要はある。設定的には単純とまでは言えないがそこまで複雑なものでもないので、読み進めてさえすれば理解はできるはず。 例えば本編で追い続けることになる雪本さくらについての謎は、どんなに勘のいい人でも4章以降にならないとわからないんじゃないだろうか。しかし、実際に雪本さくらについての謎の推理パートになる頃には材料は揃うので安心してほしい。

また、一部ではHシーンが少なく導入が強引なものが多いことについて不満の声もあるようだ。 個人的には導入の強引さ以外にはあまり不満を覚えていない。 H シーンそのものの描写は悪くなかったし、心まで丸裸になったヒロインたちの肉声で「こころのこえ」が聞こえるというのも。青春群像劇ものとしては1人1~3回合計12回というのはそこまで極端に少ないとは思わないし、1つ1つのシーンもやや長めだった。 導入はちょっと強引なものが多すぎたかなと。実は強引な入りの H シーンは嫌いじゃないけど、割合としては少なく抑えたほうが際立つものだと思っている。

1年2組3班の面々(≒主要キャラクター)全員が魅力的で、愛着が沸くように作られていたのはさすがとしか言いようがない。 以下、ネタバレがあるのでネタバレ部分は白抜き。

実はエンディングがあったひかりは、他のヒロインにはないどうしようもない黒さが癖になる。きっと彼女「も」ろくな人生を送れていないのだろう。彼女のエンディングはBADENDとして最も美しかった。真実を見て見ぬふりして逃げたら、特にお咎めなしでただただ青臭い友情が壊れただけ。一真の手元に残ったのは好きだった人と瓜二つの「率直に言って苛つく女」のみ。「今の俺にはこの痛みと屈辱が必要だ。」と、ひかりの恋人として過ごす一真。真綿で首を絞めるような、真実からの逃避の代償としてふさわしいエンディングだ。くすはらゆいのどす黒い演技は個人的に新鮮だったが、迫力があった

夏希は「こころのこえ」が聞こえるという設定の本作だからこそより映えるヒロインで、恋愛に対してもどこか一歩引いたヒロインが多い中乙女心全開だったのが愛おしさと共感を掻き立てた。悩む一真を見て勢いで告白して「自分の気持ちを優先させてしまった」と後悔するところや、モモの純粋さを見てもやもやした感情を覚えそのまま嫌味を言ってしまうところなどは、誉められた振る舞いではなくとも等身大の恋する女の子だなーと微笑ましい気持ちで見られた。言っていること・やっていること・こころのこえがかみ合わなくなることが多いのも彼女の可愛いところ。

沙彩は個人的に一番好きなヒロイン。もとからこういう奇天烈ロリ(造語)が好きなのが大きいが。彼女は過去にいろいろと苦労してきていてそれが現在のあの年不相応に達観したものの考え方につながっているようなので、個別ルートでいろいろと掘り下げてくれたらなあと思った。頭の回転が速く、一真とはまた別の能力者であることから、作中でも萌花に次いで一真の相棒のような立ち位置だった。彼女はシンプルにいい子すぎて語ることそれほど多くないかも。

百合子は成績優秀、合気道を嗜み演劇の才能もあり、善良で知的好奇心旺盛なパーフェクトお嬢様なので何か裏があると思ったらそんなことなかったぜ! 同級生なのに年上のお姉さん感が半端じゃない。彼女のルートは個別ルートの中だと気合が入っていた。ヒロインが家のことを理由に別れを決意→その理由を隠して別れ話→主人公がヒロインの本心を見破るというプロット自体はたまに見るものではあるけど、必要な役割とあらば演じ切ることができる百合子と、それを見破る能力を持った一真がやるのが良い。

さくらは……体験版の時点で退場、その後も幽霊や回想中の人物としてちょいちょい話には関わってくるけど、おまけでいいから本編で彼女を救えるルートがほしかった。一方で、もっと凌辱が見たかったとも思ってしまう。「幸せになってほしい」と「不幸になってほしい」はこと2次元ともなると両立しうるものだ。一真からさくらへの感情は恋や愛とは違うものだったのかもしれないけど、それはそれで2人にとっては大切なものだった。それが本編で言及されていたのは安心した。さくらから一真への感情はどうだったんだろう。さくらが一真のことを大好きなのは一真に宛てた手紙からも伝わってくるが、生きていれば恋人同士になるような未来はあったのだろうか

萌花はこの手のゲームのメインヒロインとしてはあまり見ないタイプな気もするけど、シンソウノイズという作品のメインヒロインとしてふさわしいヒロインだった。もちろん、抜群の短期記憶能力や一真への絶対の信頼、すべてを受け入れる懐の深さなども要因としてある。しかし、彼女がこの物語を通して得た気づきが何より大きかった。

「『ほんとうのこと』は、それだけじゃ意味がないんだよね。根拠とか、理屈とか、そういうのもすごく大事。」

それに気づいたから、それに気づける彼女だったから、生前のさくらといっしょにいられたし、死後のさくらを救えたのだと思う。

最後になってしまったが、北上と高永もただの男友達ポジに収まらないいい活躍をしてくれた。 ベースが一本道で分岐が脱落式なのもあり、彼らも最後まで物語に関わってくれた。 彼らには彼らなりの恋があったようだし、さくらが死んだ後の北上の心情変化とか、夏希が一真と付き合ったルートでの高永の反応とかは見てみたいな。

ここに書いていないサブキャラたちも皆それぞれいいキャラしていて、特に複数章登場するキャラクターは愛着もある。 それから、キャラクターに数えていいのか微妙だが、「こころのこえ」が非常にいい仕事をしていた。淡々とした口調がギャグにもシリアスにもハマっていた。

全体としてあれも見たかったこれも見たかったというようなことをいろいろと書いてしまった気がするが、それは多くのキャラクターが魅力的だった作品をやったあとに思いがちなこと。 本作のようなキャラクターも仕掛けも魅力的なゲームは今後も掘り起こしていきたい。

投稿日: 2021-10-30

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