さくらの雲*スカアレットの恋
基本情報
ブランド | きゃべつそふと |
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発売日 | 2020-09-25 |
公式サイト URL | http://cabbage-soft.com/products/scarlet/ |
ブランドサイト URL | http://cabbage-soft.com |
管理人お気に入り度 | S(一生ものかもしれない。) |
管理人おすすめ度 | A(やってほしい。) |
管理人プレイ時間 | 38時間 |
こんな方におすすめ
- 設定の文化的背景に興味がある人
- 最終ルートで感動やカタルシスを得たい人
- 令和の時代を懸命に生きる人
こんな方は要注意
- 科学的なギミックに興味のある人
- せっかちな (話にエンジンがかかるまで読み進めるのが辛い) 人
感想
プレイを迷っている人はぜひ2020年のうちにやってほしいゲーム。 所長ルート終盤のためにあるようなゲームだが、大小さまざまな謎とヒロイン別に傾向の違った恋愛が散りばめられており、道中も退屈せずに進められた。 メインヒロイン一強という構成は今まであまり好きではなかったが、所長は納得のメインヒロイン。
絵も設定も特に刺さらなかったのに、なんとなく始めた体験版が面白かったためそのまま本編もプレイした作品。 終わった頃には大好きな作品になっていた。
「退屈せずに進められた」とは言ったものの、遠子ルート、蓮ルートの時点では、少々期待しすぎただろうかと思っていた。確かに、場面場面ではグッとくるような台詞があり、登場人物間の意外な繋がりがあったりと面白いポイントはたくさんある。だから途中で投げ出さずに進めることができた。しかし、感情移入し切れたかといえば不完全燃焼気味。2人と主人公・司が惹かれ合うのは理解できるといえばできるが、その感情をもっと画面の向こうのプレイヤーにもぶつけてほしかった気もする。タイムスリップ云々の話もあまり進んでいるようには見えず、蓮ルートに関しては取り組む依頼もあまり本筋に関係なさそうなもの。(最終的な評価には響いていないが、遠子の H シーンで司がベットヤクザ化していたのも普段のイメージと違いすぎてついていけてなかった。後のルートを見て若干納得してしまったが)
その流れが変わったのがメリッサルートである。メリッサは共通ルートの地点で攻略が完了している (これは体験版の時点で察せるのでネタバレにはならないはず) が、それも3章〜4章を見ていればさもありなんという感じでメリッサ→司の感情は自然に感じられた。司→メリッサは「分からなくはない」止まり。 メリッサルートの題材は前2人のルートとは趣向を変え、条件を満たすまで降りられない列車を舞台にした本格ミステリ。「推理を楽しむ」という趣向が強いルートなのであまりシナリオに踏み込むとネタバレになってしまうのだが、真相を予測できなかった悔しさと、「どうしてこんなことに」という虚しさを楽しませてもらった。 列車から降りた後もルートは続く。ここからは蛇足かと思いきや蛇足ではなかったのが好感触。
最後の所長ルートは別格。所長はメインヒロインの風格としか言いようがなかった。あくまで司と同年代の少女である他のヒロインとは異なり、司を精神的に導く存在ということもあるし、時折入る所長視点のシナリオでは所長が司をどんなに大事に思っているかもわかる。司はその境遇から所長に大きな恩を感じているが、所長もまた司に精神的に助けられていたに違いない。このような壮大な仕掛けを持った作品の根幹を担うルートでありながら恋愛面でも深く感情移入できるシナリオを読むことができ、とても感動した。個人的には、加藤という明確な悪役がいながら単純な勧善懲悪や大義名分を立てることに走らず、ただ自分たちの意志で加藤に立ち向かっていたところがポイント高い。 謎解きも、荒削りな部分はあるが最終ルートにふさわしいエキサイティングなものだった。 終わり方はハッピーエンドとは言い切れないが、大団円より美しい終わり方になったのではないかと思っている。 エンディングムービーも、派手さはないながらも心憎い。何度も見返したくなる。
物語を彩る音楽も、多くはないが高品質。それぞれが印象的な曲でありながらシナリオの邪魔にはなっていない。歌入り曲の使い方も上手。
今の世の中との関連性を匂わせる要素といい、2020年のうちにプレイして良かったと言えるゲームだった。 プレイを迷っている人がいたら、2020年の今のうちにぜひ体験版からプレイしてみてほしい。 また書いた通りルートによって方向性が違うので、もし最初のルートでコレジャナイ感を覚えても、プレイしていて苦痛に思うほどでなければもう少し進めていってほしいと思う。
投稿日: 2020-11-08