なないろリンカネーション

家族、死生観、人ならざるもの、そういった要素を絡めながら滝川琴莉という女の子の恋をフルプライス 1 作品かけて書き切っている。琴莉への力の入れようと言ったら発売前人気投票で最下位だった琴莉が発売後人気投票でトップに躍り出るほどだ。

かと言って、メインヒロインである琴莉のエンディングだけがぶっちぎりで「泣ける」かというと実はそうでもない。 他のヒロインのエンディングにも必ず琴莉がたどり着く「結末」があり、それがすべてのルートで異なる。 どのエンディングの琴莉が一番幸せなのか、どのエンディングが自分にとって一番納得がいくかを考えるだけでも楽しい。 そういう意味では、推奨攻略順 (琴莉を最後に、とか) はあるものの、意外と推奨攻略順通りにやらなくても楽しめるゲームなのかもしれない。

前半はもちろん、重い展開が続く後半でもコメディ成分は欠かさないので、体験版や他のかずきふみ作品でコメディパートが気に入った人も安心して買ってほしい。エロも回数・尺ともにそれなりにある (残念ながらエルフ・シルキーズ時代のことは知らないので比べられない) 。すめらぎ先生の書くセクシーなお姉さん (とロリと女の子) とシルキーズプラスの塗りは相性抜群。

ただし、本作は書きたかったことが「滝川琴莉の恋」ただそれだけであり、それゆえにこじんまりとまとまってしまっている。各個別ルートの話の差分は少なめで、扱う事件も全ルート同じ。結末も琴莉の辿る運命を除けば大差ない。私は遅めのオートモードでプレイしていたのでプレイ時間が長くなっているが、平均プレイ時間も短い。 FANBOX をみる限り、こういった「欠点」とも取れる要素もは承知の上でこの構成になっているようだ。しかしそれゆえに広がりを感じづらくなり、プレイ後何週間もああだこうだと作品について考えてしまうような作品にはならなかった感がある。

それと、個人的にはシルキーズプラスのゲームのシステムはあまりわかりやすくないと思う。アイコンが何を表しているのかすぐには分からないことがあるし、「既読のみスキップ」が割ともっさりしている (一枚絵が表示されている時は速い) 。

とはいえ、ジャンル「涙あり笑いありのホームコメディADV」の看板に偽りなし。