紙の上の魔法使い

基本情報

ブランドウグイスカグラ
発売日2014-12-19
公式サイト URLhttp://kagura.rdy.jp/kamimaho/
ブランドサイト URLhttp://kagura.rdy.jp
管理人お気に入り度A大好き!
管理人おすすめ度Aやってほしい。
管理人プレイ時間34時間

こんな方におすすめ

  • 悲劇に心を揺さぶられたい人
  • 失恋の痛みを味わったことがある人

こんな方は要注意

  • 誤字脱字が気になる人
  • 好きなキャラクターには幸せになってほしい人

感想

甘美で切ない、時に禍々しい失恋譚。こういうシリアスなゲームで明るそうなコンセプトを掲げているとコンセプト詐欺っぽくなりがちだが、本作の場合は公式サイトに記載の青春譚、恋愛譚、幻想奇譚のコンセプトを確実に内包しつつどシリアスだったのが良かった。絵は可愛らしくありながら幻想的な世界観と調和しており、音楽も瑞々しく悲しげで◎。欲を言うなら「アズライトの棺」「ライムライトの残火」のような感傷的になれる主題歌があったらもっと嬉しかったのだが、インスト曲が本当に雰囲気に合っていてクオリティが高いので満足している。

ただ私としては、本作のエッセンスは魔法の本が織りなす失恋の物語であることかなと思う。 作中の、特に中盤以降で多くの主要キャラが様々な形で失恋をする。 その失恋の大半に魔法の本が関わってくるわけだが、同じ魔法の本が関わる失恋でも、普通の失恋もあれば魔法の本が関わらないとなかなかお目にかかれないシチュエーションでの失恋もある。 中途半端な失恋もあれば完膚なきまでの失恋もある。 短いスパンの恋もあれば長いスパンの恋もある。

私が数えた限りでは最低でも10回の失恋描写があった。 数々の失恋描写が人に恋をすることの痛みと、それがもたらす強さ・弱さを抉り出す。これが非常に興味深い。 その「弱さ」の部分を多く担っていた遊行寺夜子さえも、この世界観とテーマの中ではただの我儘お嬢様ではなく内面の覗きがいのある人物となっていた。 また、同じ登場人物でも、振る人、振られる人、振られることすらなく失恋する人、といった立場が章によって変わっていくのも面白かった。

結局どの失恋にも言えるのは、その恋が二度と叶うことはないということを思い知ることが、失恋する側にとって諦めて前に進む第一歩であるということだろう。諦める、ということが「その相手のことを好きでなくなる」ことを内包するかはまた別問題として。

恋が成就して幸せになることを基本とする純愛系エロゲにおいて、ここまで様々な角度から失恋を魅せてくれる作品に出会えて嬉しかった。

ちなみに、瑠璃が最後にクリソリベルをあっさり許してしまう展開が不思議ではあるが、瑠璃が紙の上の存在であることが関係しているのではないかと勝手に思っている。夜子が自分の弱さを受け入れて成長するためにクリソリベルをも受け入れると決めた以上、瑠璃もクリソリベルを憎んでいるわけにはいかなかったのだろう。”四条瑠璃”は夜子の幸せや成長を妨げるようには書かれていないはずだから

投稿日: 2022-05-28

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