フラテルニテ

基本情報

ブランドCLOCKUP
発売日2014-07-25
公式サイト URLhttp://clockup.net/fraternite/
ブランドサイト URLhttp://www.clockup.net/
管理人お気に入り度B+好き。
管理人おすすめ度B+興味があればぜひとも。

こんな方におすすめ

  • いろいろな人の狂気を覗き見たい人
  • 胸糞悪い話を欲している人

こんな方は要注意

  • 陵辱で嫌がる姿を堪能したい人(あるけど少ない。どんな過激な行為もだいたい和?姦)
  • 女の子を攻略したい人
  • “おしっことかうんちとかNGのヒト”

感想

塾……を装ったカルト教団……を装った売春組織を通して、幸せや救いというものの主観性を過激に描いた怪作。痛みや苦しみを感じる肉体の働きは健在なまま、しかしカルトのために喜んで命を投げうつ少女たち。その衝撃的な絵面の陰に隠れがちではあるが、青年期に陥りがちな危うい精神状態とそれが招く破滅の数々を描いた作品でもあると思う。

今回の感想は割と全体的にネタバレです。

いつもプレイ時間を計測しているのだが、セーブ画面にプレイ時間が表示されることに油断して、何度も見返しているうちに最初にクリアした時のプレイ時間がわからなくなってしまった……。

マルチザッピング形式を採用しており大智、愛(主に中盤以降)をメインの視点に据えつつ、美桜、芽生、円夏、紗英子、心音、友佳、瑛の一人称視点でも物語が展開される。個人的にマルチザッピングは好きな面も好きではない面もあるが、この物語に関しては適切であったと思う。

クラブにのめり込むきっかけになった彼らの悩みは、そう易々と人に話せない内に秘めたものが多い。また、あのクラブが常軌を逸した活動をする団体である以上、彼らの考えのどこかに我々プレイヤーの想像できない飛躍や極論が含まれているはずである。それゆえに、もし本作がマルチザッピング形式ではなく、大智や愛の視点から各キャラクターを観察するだけのものであったならば、彼らがどのような考えでクラブに傾倒していったかを想像することは難しかっただろう。

個々の視点での物語は、緩やかに繋がってい入るもののある程度個別に考えることもできる程度の繋がりである。(ただし、白坂家(大智、美桜、芽生)と愛は除く)。 以下、登場人物別の感想。

心音(+舞子、理恵、奈津美)

何の悪意がなくても他人の逆撫でしてしまうとっても可哀想な女の子。
いじめられていなかった頃の彼女がどんな人物だったのかは分からないが、クラブに染まった後の狂い方や昔から交友のあった奈津美の発言を考えるに、以前から人にどう思われるかをあまり気にしない子だったのかもしれない。制服姿の立ち絵でもよれたリボンが左右非対称に結ばれていて、世間体や見た目に無関心な態度が伺える。

いじめられっ子がいじめ被害をきっかけに過剰に人の目を気にするようになる――という展開はよその作品でも見たことがある。しかし彼女は、クラブという特殊な環境と紗英子のスマートな思考誘導、そして何より彼女自身の性質から、逆に「自分こそが特別で、周りがそれを理解できていないだけ」という思い込みに至る。

その狂気が舞子たちの狂気をも呼び覚ましてしまった。その毒牙にかかったのが心音エンドで、回避してその間に心音がさらなる狂気を身につけたのが本筋といったところか。

しかし舞子も心音に負けず劣らずやばいやつだ。

いじめっこ3人組のうち、理恵と奈津美はまだ行動原理が分かる(価値観を理解することはできないが、「そういう動機」で動いているのだと推察できる)。
理恵は集団の中の自分の立場に非常に敏感で、強い立場にある舞子と共に行動し弱い立場の心音をいじめることで自分の地位を確保しようとしている。しかしそれは彼女自身が強くはないことの裏返しでもあり、実際に心音エンドでは舞子や奈津美にも露骨に下に見られている。奈津美が舞子を「舞子ちゃん」と呼ぶのに対して理恵のことは「理恵」と呼んでいたことにも力関係が出ていた。
奈津美は3人の中では最も分かりやすく、前の学校までで溜まりに溜まった心音へのフラストレーションが動機になっている。前の学校までは変な子だけど友達だし……と我慢していたところもあるのだろうが、進学先で心音をいじめる舞子たちを見て何かが切れてしまったか?(にしてもはっちゃけすぎだが……) 理恵が舞子に取り入ることで立場を強くしようとしたのに対し、奈津美は心音の友人でいることで立場を弱くされた過去がある点では、2人は対象的でもある。

一方で舞子はどうだろう? 彼女は奈津美のような分かりやすい恨みもなければ、理恵と違って既に安定した立場を手に入れている。今更いじめなんて自分の経歴を傷つけるような行為に手を染める理由はあるんだろうか……? おまけに心音が脳漿をぶちまけるのを見ても冷静に「おもしろくない中身」と言い放ってあまつさえ唾を吐いてすらみせる。優等生でいることはそれほどまでにストレスが溜まるようなことなんだろうか?

彼女の残虐性の源は理解できなかったが、本筋のシナリオでの末路は中々に良かった。薬漬けにされても最後までプライドを手放さない姿は凌辱ゲーの優等生キャラに相応しい。自分を保とうと「舞子」という名前を呟いていたのがとうとう「ま●こ」になってしまうところは、「それがやりたかったのか!」と言いたくなってしまったが。

紗英子(+瑛)

日常が退屈過ぎて行くところまで行ってしまったお方。
他のキャラクターと違ってあくまで冷静に狂気に身を浸しており、クラブの教えが嘘っぱちであることも自分のやっていることが狂っていることもある程度分かった上で会話してくれるので、ある意味最も安心して会話を読める登場人物であった。こんなことで安心してしまうのもおかしいが。

彼女はひたすらに退屈していたようだが、別に初めから破滅願望があったわけではなかったようだ。

彼らのような平凡な人生…流れに身を任せるだけの、負け犬のような人生は送りたくない。
内心、そんな他人の不幸を望むようなことを頭に過らせてしまったことも、また別の苛立たしさを沸きあがらせてくる。
もっと、誰にもできないような事をして、本当の意味での充実感を得たい。
と、そんなことをぼんやりと考えながら、宛てもなく私は歩き続けていた。

クラブに通う前に抱いていたこの苛立ちを持ち続けられていれば、退屈な期間は長くなれどもまた違った道があっただろうに……。

本作品の R-18 シーンはプレイ内容は明らかに陵辱のそれだが和姦の形を取っているシーンがとても多い。ついていけないという人が多いと思われるが、私もあまり趣味ではない。物語としての関心は持っていたが。
その中でも紗英子が初めてクラブに訪れたときのシーンはこれぞ凌辱もの!という感じでなかなか自分の趣味に合っていた。

「すぐに、いつでも言いなさい。そういった相手がいるのなら……すぐにでも、止めるよ」
ある名前が浮かび、そして……それを反射的に口にしようと、した。

恐怖を感じつつも気丈に反駁するところも好きだし、淡い想いを抱いていた瑛と同じ相手に弄ばれて思わず瑛のことを考えてしまうのも好き。その考えも最後には快感に押し流されてしまったようだが。

しかしその瑛が紗英子に同じ気持ちを抱くことはない。それどころか男性として見られることを辛く思うはず。瑛は紗英子に憧れているが、それは決して異性としての憧れではない。ならば精神的百合……もこの場合無理だろう。

この2人の関係のもどかしさは、本作前半の清涼剤だった。 後半には瑛はおそらく死亡、紗英子は瑛の性器をクーラーボックスに入れて平気な顔で塾長室に届けに来るくらいいかれた女になってしまうが……。

瑛と紗英子の悩みは、どちらも時間が解決してくれることではない。だが少なくとも、時間が経過して大人になることでまた別の選択肢が取れるようになるという共通点もあったように思う。特に瑛にはあんな形で性器を切り取るのではなくて、ちゃんとした医者にかかって手術を受けてもらって、その上でまた悩んでもらいたかった……。紗英子だって、広い世界に出たならば「自分にしかできないこと」がもっと健全な形で見つかったかもしれない。

しかしそれも私の勝手な言い分で、彼女たちからしてみれば少しでも早く解放されたい、それこそのたうち回りたくなるような苦痛だったのだろう。それでも勝手な言い分をせずにはいられない。

円夏

快活で可愛らしい女の子に秘められた恐ろしいまでのマゾの才能。
物語開始時点から考えて一番落差の大きい子なのではないだろうか。

初めはこんなに社交的で心身ともに健康そうな子がなぜ愛に執着しているのか、普通の女の子だった彼女があそこまで雌豚と化すことができたのかと疑問に思わずにはいられなかった。
今でもすっきりはしていないが、もしかしたら2つの疑問の答えは同じなのかもしれない。
あまり明確には描写されていないように思うが、彼女には主体性に欠けるところがある。きっと、他者に依存し、自分の身を委ねるような性質を元々持っていたのだろう。多分、「親友」も必ずしも愛である必要はない。「自分とは違う愛に惹かれた」「他に友人がいないので依存対象としてちょうど良さそう(に見える)」くらいは無意識下にあるのかもしれないが、愛がいなくてもきっと他の子に依存していただろう。

そう考えると、彼女の「ちょっと極端だが、年相応の少女っぽい」描写の数々に対しても、ただ微笑ましいという感想ではなくなってきた。愛の大智への態度を色恋と信じて疑わないさまや、下記のような、性についての考え方の一節もそう。

もちろん、好奇心なんかはあったし……友達が彼氏とのそういう話をしていたら、乗っかってみることだってあるにはあった。
だけど、自分にはあまり関係のない世界のように感じていたように思う。
いつかは自分にも訪れるであろうけど、とりあえず今は関係のない――
よくわからない、曖昧な『大人になった自分』が受け止めるべきこと……そんな風に。

性に対する好奇心の強さに反する当事者意識の希薄さがお年頃らしくて微笑ましいな思っていたけど、彼女の当事者意識というか、自分の人生は自分のものであるという感覚の希薄さは性に留まるものではないことを知った今は笑うに笑えない。

明るく社交的な性格も、他者に頼りやすくするために無意識に作り上げたのかもしれない。他者を必要としていない愛とは対照的。

しかし才能の片鱗は覗かせていたとはいえ、「怖い。この人達、普通じゃない。」と怖がれるだけの神経を持っていた円夏がここまで堕ちることができることに疑問がなくなったわけではないが……。

この人達の前で、惨めに死ぬことができて……本当に幸せ……!
おとうさん、おかあさん……私を産んでくれてありがとう……!
私はいまから、なんの価値もなく死んでしまうけど……本当に幸せだったから……!

美桜(+芽生・友佳)

家族は自分のことを愛して、思いやってくれる。それでも所詮は他人。自分と同じ経験はしていないし、ましてや自分の気持ちなんて分からない。
そんな当たり前の事実ゆえに広がっていく溝がもどかしい。

美桜は本来、優しくて面倒見の良いお姉ちゃんだったはずだ。それは限られた正気“っぽい”場面の描写からもよく分かるし、彼女は強姦魔による魂の殺人を受けた可哀想な子でもある。
しかしそれを差し引いたとしても、作中では園田を妄信する姿が色濃く描かれていたせいでその印象ばかりが強い。もしプレイヤーを彼女にもっと同情させようと思えば、強姦される前後の描写を入れたり大智に説得されている場面での一人称視点での心理描写を増やしたりと、やりようはあったはずだ。
だが本作は(おそらくあえて)そうしなかった。プレイヤーを美桜に同情させすぎると狂気の描写が薄味に感じられてしまうし、主人公であり、弟であり、彼女を救おうと奔走する人物でもある大智に感情移入させたかったからだろうか。そうだとすると、狙いは相当うまくいっていたと思う。

説得しようとする大智の言葉に耳を貸さなかったり、クラブの男たちに妹を強姦させてそれが妹のためになると本気で言っていたりする美桜には、大智と一緒に私ももどかしい思いをさせられた。
でも、そこまではまだ良い。彼女にとって、強姦事件で受けた傷とクラブで得た平穏は切っても切り離せない。渇望していた平穏を与えてくれたはずのクラブ(≒彼女にとっては園田)ですら自分を弄んでいただけ、と認めるなんて、強姦事件の傷を倍に広げられて向き合わされるようなものだ。一介の女子学生に耐えられるはずがない。
しかし、妹の芽生を輪姦させて巻き込んだ時点で、彼女も加害者になってしまった。芽生の泣き叫ぶ声をバックに芽生のためだと語る美桜には胸が悪くなってしまったが、一方読み手としてある意味葛藤から解放されたような気持ちにもなった。美桜に対する自分の感想が「全然話を聞いてくれないし巻き込んでくるけど、この人は救ってあげるべき可哀想な人なんだ」から「もうこの人のことは諦めて、他の人を優先させても仕方がないしそうすべきだ」になったからだ。

トゥルーエンドでは愛を刺殺し、自分もそのまま自殺。
自分を貶めたものたちに何一つ向き合えずに死ぬという結末は、行きつくところまで行ってしまった彼女が辿れる、もっとも精神的にマシな末路だったのかもしれない。

ただ、美桜も救いたかったな、と思った場面は後半にもあった。
芽生を男たちに犯させた後、芽生と美桜が一緒にお風呂に入る場面だ。
傷ついた芽生に対して美桜が選んだ行動が、「芽生を抱き締めて優しく話し掛けながら一緒にお風呂に入ること」なのが辛い。強姦された美桜に家族はどう接していいか分からず距離を置いてしまった時期もあったようだが、きっと美桜も本当は優しく抱きしめて話を聞いてほしかったのだろう。
芽生とお風呂に入っているときの美桜の話の内容やその際に行われる行為は擁護できないし、美桜とどう接していいか分からなかった大智や両親が悪いとは思えないが。

その壮絶な半生から幸せや喜びをというものが理解できず、「救いなんて、ない。」と諦めきっている一方で、自分が手を回したクラブで救いを見いだす人々の観察を通して、救いについて考えることをやめられない少女。
作中での振る舞いが多面的で感情が掴みづらく、行動の動機を想像することさえ難儀したキャラクターだった。

少し周囲から浮いたところのある清楚な美少女として自分を印象付け、計算ずくで大智の行動をコントロールする。大智を利用して園田さえも退場させて、自分の安寧を手に入れる。時々大智を気遣うような行動を見せるが、それも計算の上でのこと。

ただ、作中の彼女の姿がすべて偽りだったかというと決してそうではないだろう。
周囲の人間が都合良い方向に解釈して愛の真意に気づかない範囲であれば、愛は本音を語ることもあったのではないだろうか。
例えば、大智はなぜそこまで他人のために動けるのかと問いかけた言葉は、作中のほとんどの場面での愛の姿がかりそめのものと知った今でもただの出まかせとは思えない。愛は物事に対する執着はないが、自分には理解できない他人を観察することにはやや執心していた。あれは彼女の本心からの疑問だったと思う。
それに、彼女の言葉にどれだけ嘘があろうとも、彼女の体に刻まれた傷痕は本物だ。

彼女の思惑通り、この物語はほとんどが愛の掌の上で進行していた。にもかかわらず最後までクラブを終わらせることができなかったのは、その掌がクラブという狭い範囲に閉じており「客」には支配の範囲を広げられなかったことと、愛の今の立ち位置が園田の存在によって作られたものだったからだろう。
結局園田が死してなお、園田の存在から逃れられなかった哀れな子。

愛はエンディングまでずっと、逃げられない「クラブ」という存在とともに生きた。愛の台詞にもあった「今さらなかったことになんてできない」が最も大きな理由ではあると思うが、それだけではなく、クラブの人間を観察することで救いや幸せの何たるかを考えるのを止められなかったのもあるのでは。
そんな彼女の切実さが最期の最期に、ほんの少しだけ報われるところがこの物語の憎いところ。
愛は誰かに愛される幸せを大智に教えられると同時に、「クラブ」と不幸せな生から解放される。
最初から最後まで胸糞悪い展開ばかりのはずの本作の読後感が意外と悪くないのは、メインヒロインたる彼女の迎える結末のせいだろう。

千喜

この子だけは幸せになってほしい。取り返しのつかないことになる前にクラブを抜けられてよかった。
数年後、クラブでの出来事に違和感を覚えた千喜が大智のことを訪ねてきて、真実を知った千喜が大智の(両親のために表面上は普通にしているが)壊れた心を包み込んでくれて、なんやかんやで結ばれる後日談を想像してしまったよ。

大智

本当によく頑張った。常識的で心優しく、人並みに迷いはするけど一度決めたら簡単には諦めない。作品が違ったらヒーローになれたでしょうに。(本作でも愛のヒーローにはなれたかな。彼女心だけは少し救えたので。)

そんな大智がほかのキャラクターと同じように危うさを抱えていたとすると、それは正義感の暴走や独善かもしれない。でもそれはもう仕方ない。確かに、頭ごなしに相手の考えを否定して説得しようとする序盤の彼の行動は正しくはなかったかもしれないけど、家族が怪しい団体に入り浸ってるとなったときに、一般的な男子学生が正しい知識をもって正しい行動を取るなんて無理だ。むしろ何度無下にされても姉を見捨てなかったことを褒めるべきだろう。

でも大智は作中の出来事を通して自分の行動が招いた破滅を知ってしまった。
トゥルーエンド付近での、過去の自分の台詞との対話が辛い。

――麻薬みたいなものだ。
いいや、違う。これは麻薬めいたものなんかじゃない。俺は救われているんだ。幸せなんだ。
(略)
――みんな辛そうで、可哀想だ。
違う。そうじゃない。可哀想なんかじゃない。俺は幸せで、今が楽しくて……
――助けてやりたい。
助けなんていらない。俺は……
俺にはもう、救われる資格なんてないんだ。

これは大智じゃなくても泣くよ。

すべてが終わって病院で目覚めた後、美桜を失い、芽生が壊されてしまい罪の意識にかられる両親を「俺がいるから」と励ましてみせる。
(大智の主観では)「誰も救えなかった」からこそ、せめて両親の支えにならなければ大智の心がもたなかったのだろうとは思うが、にしても強い子。
本当に、こんな物語の主人公でなければなあ…………。でもそこが好き。 ヘテロカプでも BL でも、大切な人のために心を痛めることができて、それでもその人のために笑おうとする攻めが私は好きなんだよなあ……。

投稿日: 2024-04-28

Reviews に戻る