アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-
基本情報
ブランド | きゃべつそふと |
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発売日 | 2018-11-30 |
公式サイト URL | http://cabbage-soft.com/products/amagra/ |
ブランドサイト URL | http://cabbage-soft.com |
管理人お気に入り度 | B(好きかも。) |
管理人おすすめ度 | B+(興味があればぜひとも。) |
管理人プレイ時間 | 32時間 |
こんな方におすすめ
- 設定の文化的背景に興味がある人
- 美術史に興味がある人
- 細かい描写から色々想像するのが好きな人
こんな方は要注意
- 科学的なギミックに興味のある人
- せっかちな (話にエンジンがかかるまで読み進めるのが辛い) 人
感想
平易で理解しやすい口当たりの良さとあれこれ解釈のしがいがあるキャラクター・世界観造形を兼ね備えた作品。このお話は一言で言うと、(1) 我々 (と主人公シュウ) とは異なる文化の街の学生たちと文化祭の準備を進めつつ、(2) 刻一刻と迫りくる街の終末を阻止するループものということになる。(1) と (2) どちらも綺麗にまとまった作品であることは間違いないのだが、プレイを終えて振り返ってみたとき、没入感や満足感を "それなり" にしか感じられていない自分がいる。
(1) については、常識の違う人々との交流が温かく描かれていた。これまでの記憶もなく、過剰な芸術偏重ともいえる文化の街で生きることとなったシュウ。親身になって街での生活を助けてくれて、シュウ自身にも興味を持ってくれる友人たちがシュウの心の支えとなることはごく自然なことである。物語があまり動かずともすると飽きられてしまいそうな序盤でも、こうして感情移入を促進することで「まだ読み続けよう」と思わせる構成は良かった。さらにいうと、一見平和な日常そのものな場面でも (2) につながる要素をばら撒いていて、サボらずにしっかり読んでいると後半ハッとできる場面が増える。
メインテーマともいえる (2) は、各個別ルートで少しずつ設定を明かしつつ、決定的な部分の答え合わせはすべて終盤に集中して行うという形式をとっている。この形式自体は好き嫌いが分かれるものであろうが、真実を言い当てることに拘らず世界観についてあれやこれやと考えながらプレイするのが楽しい。
ただ、(1) と (2) は両者の魅力を打ち消しあってしまった面もあったと思う。 だから、ここまで綺麗な作りになっていて私はこの作品を "それなり" としか思えなかった。 正常性バイアスという言葉もあるし、終末が訪れると知っていても平和な学生生活を送ろうとしてしまうのは理解できる。学生生活があるから、友人たちの生きてきた街を救いたいという気持ちが増していくことも理解できる。 ただ、物語としてみたときに、 (一応できることはやりつつも取りつつも) 呑気とも言えるような楽しい学生生活を過ごしておいていざ終末が来たときに重い空気を出されても、一緒に悲しみきれないところもある。逆に、友人たちとの楽しい時間でも、終末が伝えられない、伝えても十分に伝わらない、というもどかしさが気になってしまう。 とはいえ、シュウがあまりうじうじしていても仕方ない状況だったのは確かなので、それが致命的だったとは思っていない。
「平易なのに考察しがいがある」「コアな要素も入っている万人受け」という冬茜トム節が1番炸裂していたのはこの作品だろう。ライター冬茜トムが気になるという人にはぜひこの作品からプレイしてもらって、私のお気に入り度 S 作品「さくらの雲*スカアレットの恋」「もののあはれは彩の頃。」にも興味を持っていただきたいところだ。
投稿日: 2021-02-28