2045、月より。

基本情報

ブランドMELLOW
発売日2022-09-30
公式サイト URLhttp://mellow-soft.com/2045/
ブランドサイト URLhttp://mellow-soft.com/
管理人お気に入り度C+悪くない。
管理人おすすめ度B興味があれば。
管理人プレイ時間29時間

こんな方におすすめ

  • アンドロイドヒロインを堪能したい人
  • エロゲを音楽で味わう人

こんな方は要注意

  • 感情を揺さぶられたい人
  • 退廃的なHシーンで抜きたい人

感想

これまでのブランド・ライターの傾向から予想していたよりも、ずっとしっかり SF していた。物語の整合性に注意を払っていることが伝わってきたものの、ブランドの既存作品の強みは抑えられており全体として毒にも薬にもならない感じ。メインヒロインよりもサブヒロインの西條彩夢のほうが “らしい” ヒロインで魅力的に映った。決して本作の完成度が低かったわけではないし、新しい方向性を探る取り組みは応援したい。それでも、本作に限って言えばあまり良い方向に働いていないように思えた。

粗削りな部分を残しつつも感情をガンガン揺さぶってくるタイプのシナリオを書くブランド・ライターだと思っていた。 そのため、本作も SF 部分はほどほどに抑えてエモーショナルな話にするのではないかと予想していた。 確かに本作は、ロボットによる感情の獲得についての話も多く含まれる。 しかし、登場人物の感情の動きよりは SF 的な話の展開のほうを重視していたと言っていいくらいに SF がメインだった。

しかもその SF 部分も、目新しい要素こそなかったものの堅実な造りになっていたと思う。 少し「あれ?」と思うことこそあれ大きな破綻は見られなかった。 開示すべき設定は開示され、回収すべき疑問も回収されていた。 私が「あれ?」と思ったことも、現実世界にも存在する用語について(「プログラミング」と「プログラム」の使い分けとか、「プロトコル」という言葉の使い方とか)や、頭のいい登場人物が集まっている割に敵に対してちょっと後手に回りすぎだったことなので、物語を楽しむにあたってさほど致命的ではない。 これは想像だが、スタッフの皆さんには SF 作品の前例が少ないからこそ、物語の整合性に細心の注意を払ったのではないだろうか。 始終、必要以上に風呂敷を広げたり過剰に感情を揺さぶったりすることは避けているような印象を受けた。

しかしその苦労が面白さに繋がったかというと、そうは思えなかった。 BGMは相変わらず良い。自分の好みでは前作の「アサガオは夜を識らない。」に軍配が上がるが、勝るとも劣らない曲数とクオリティだった。 ボーカル曲についても、ヒロイン別 ED があるのはもちろん、挿入歌はタイミングが「ここしかない」と思えるくらい完璧で効果的に使われていた。最初はピント来なかったOPもクリア後はしんみり来るようになった。 ただ、ヒロインの痛いほどの感情の動きやアクの強い結末といった自分が期待していた要素は、物語の整合性の犠牲になってしまっていたように思う。 Hシーンも退廃的な感じではなく愛を確かめ合う純愛Hで、かといって愛を確かめ合う過程としての行為を極めているわけでもなく、本当に「普通」のシーン。 ありていに言ってしまえば毒にも薬にもならない無難な感じ。

“らしさ”という意味だと、サブヒロインの西條彩夢がメインヒロイン以上に魅力的に映った。 ネタバレになりすぎない範囲で語るとしても、主人公に対して異性としての興味と研究対象としての興味が同居するある種の狂気や、そんな彼女も持っている人としてありふれた、でも激しい感情。サブヒロインながら物語の中でも美味しい立ち位置で、MELLOW にはこれからもこういうヒロインを期待していきたいと思わせる。

どんなブランドも、今までと同じことだけやっていてはジリ貧になってしまう。 なので個人的には、エロゲブランドがこれまでとは違う方向性を探るという取り組みは応援したいと思っている。 しかし、本作におけるその取り組みが報われたかはまた別問題だった。 次回作以降で、ブランドの強みと新しい取り組みの上手い着地点を見つけてくれたなら、いちエロゲーマーとして嬉しい。

投稿日: 2022-11-26

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